「この塗り薬はそんなに心配しなくていいですよ。皮フは毎日生まれ変わるし、長期間使わなければ副作用も心配ありません。」
今日も皮フ科の外来ではこんな風に簡単に医師からステロイド軟膏の処方がされています。
また病棟においてもちょっとかゆい、ほんのちょっと皮フに湿疹ができているというだけですぐに医師は「よく効く軟膏を処方しましょう」という具合にステロイド軟膏を使わそうとします。
その恐ろしさを知らない患者たちは本当によく効く薬だとせっせと軟膏を塗るのです。
今までの自分の経過を思うと信じられない現実です。
私がアトピー性皮フ炎と診断されたのは、4~5才の頃でした。
当時は症状も軽く、医師からも大人になれば自然と治るでしょうと言われていました。
そしてその頃からです。
私がステロイド軟膏を使い始めたのは。
けれど医師の診断通りいかず、私のアトピーは一向に良くなりませんでした。
何軒もの薬局をたずねてはいろいろと漢方薬を飲んだり、アトピーによく効くという薬があれば試してみましたが、結果を出すことはできませんでした。
そして結局は皮フ科でステロイドを使い、今現れている症状を抑えるだけの対症療法にたよるしかありませんでした。
そして19才の頃よりほんの少し外に出ただけで顔が真っ赤に腫れるようになり、その後は坂道をころげ落ちるように症状は悪化してゆきました。
ほとんど年中、顔は赤く腫れ、痒みはひどく、日光に当たれば更に症状は悪くなり、日中は外出できない程になりました。
それでも皮フ科の医師よりは、何種類ものステロイド軟膏と抗アレルギー剤に、全然効かない痒み止めの内服薬を処方されるばかりでした。
またあまりにもひどい時にはステロイドの注射を受けましたが、それも一時的に楽になるだけでしばらくすればまた元にもどるという無駄な処置を受けていました。
何の改善のきざしもみられないまま25才の春に皮フ科の医師にもうステロイドを止めるしかないと言われ、ステロイドの離脱の為に3ヶ月の入院をすることとなりました。
医師の指示通りにやってきた自分が、どうしてステロイドの副作用に苦しまなければならないんだろうという疑問を持ちながらの入院生活でした。
その入院生活はと言うと、激しいリバウンドが続き、特に顔はケロイドのようにただれ、トイレに行くのさえためらってしまう程でした。
退院後も顔はじゅくじゅくで苦しい日々が続きました。
その頃にくれえると知り合えることとなったのです。
これ以上顔がはれるのは嫌だと言う私の希望でオイルのみ使用することとなりました。
最初は手足が真っ赤に炎症を起こし、痛みも激しかったのですが、顔の方はじゅくじゅくするのもおさまり、もしかするとくれえるで私はアトピーから脱出できるのではと希望を持つことができたのでした。
くれえるを始め半年ほどで症状も大分治まり、このままどんどん良くなるのではないかと思うぐらい良くなりました。
けれど良いことばかりは続きませんでした。
再び顔が腫れたりじゅくじゅくしたりと症状が出だしたのでした。
手や足もゴワゴワで、炎症もひどく、痛みも激しく我慢できなくなり、とうとう皮フ科の医師に助けを求めたのでした。
皮フ科ではお決まりのパターンでステロイドの内服薬を処方され、一時的には良くなったものの、ステロイドが減量されると再び症状が悪化するという悪循環を繰り返していました。
後で考えると、せっかくつらい思いをしてステロイドを止めようとしてきたのに、どうしてまたステロイドに頼ったりしたんだろうと悔やまれて仕方ありませんでした。
けれど、くれえるのスタッフの皆さんからも励まされ、もうこんなバカなことはしないと決心しました。
決心はしたものの、再びステロイドを止めた後の症状はすさまじいものでした。
背部はケロイドのようにただれ、首も空気に触れるだけで痛み、手足もバリバリに乾燥し、全身の激しい痛みに絶望的になり、毎日泣いて過ごすような有様でした。
そんな厳しい日々が1年近く続きました。
いつまでこんなつらい日々が続くんだろうとスタッフの皆さんにはくどくどと愚痴を言いましたが、その都度真剣に相談にのってくれました。
おかげで今年の春は例年にないほど調子が良くなりました。
いつもなら2月頃より日光を浴びると顔が真っ赤に腫れあがっていたのが、今年はほんの少し腫れた程度で済みました。
体の痛みも消え、自由に体が動くことの嬉しさで一杯です。
ただ一つ残念な事は、ステロイドの副作用で白内障が発病してしまったという事です。
その程度は軽いものの、日常生活においては視力が落ちた為、かなり不自由を感じます。
もっと早くにステロイドを止めていればと不便な度にそう思います。
今もどこかでステロイドの怖さを知らず、せっせと体に送りこんでいるのかと思うとぞっとします。
この現実を一人でも多くの人に知ってもらえばと切実に思います。